産業医になるのはどんな医師?産業医になる理由は?

産業医を選ぶ際、どの様な経験や専門を持った医師なのか?という点が気になると思います。産業医になる医師はどの様な医師なのか? そもそも、どの様に産業医になるのか?という事を知っていれば、自社に合った産業医を判断するために有効です。

そこで、今回のテーマは「産業医はどんな医師?」です。

産業医になるには

全医師約30万人のうち8万人程度が産業医の有資格者です。医師の実に4人に1人以上が産業医資格を持っているということになります。

卒業すれば産業医資格を得ることができる産業医大という大学もありますが、この大学は1978年設立でこれまでの卒業生は累計3千人程度。

従って、産業医資格を有するほとんどの医師は、大学卒業後に産業医資格を自ら望んで取得しているということになります。

産業医資格の取得はかなりの負担

講習会を受講し、実地研修を終了するなどして必要な単位を満たせば、無試験で産業医資格は得られます。

そう聞くと簡単なように思われるかもしれませんが、申請には1時間1単位で最低50単位が必要です。年に何度か行われている集中講座を利用するにしても、朝から夜まで講座を受けてもまるまる5日間を要しますし、夜間や週末に行われる講習会をまめに受けるとしても平日の医師としての活動もありますからかなりの負担となります。

産業医になりたがる医師は案外少ない

でも、そこまで努力して取った産業医資格なのに、産業医活動にはあまり興味が無いという医師が多いのです。

いざというときの保険のようなつもりで取れるときに取っておいて、機会があればやってみても良いかなという程度に考えているようです。

なぜそうなのか?これは収入の面から考えると理解しやすいかもしれません。

外勤日のバイトが貴重な収入源

勤務医には週に一度の外勤日が設けられていることがほとんどで、この外勤日のバイトが貴重な収入源となります。

基本的に医師は循環器内科や整形外科など自分の専門領域でのバイトの働き口には困りません。最近では産業医紹介・派遣会社が増えたため産業医の非常勤バイト案件紹介は増えてきていますが、あえて産業医バイトを選ぼうとする医師はどうしても少なくなります。

また、非常勤医師の給与は1時間1万円が相場です。産業医のバイトで午前中に1社訪問して紹介会社からの振込額が3万5千円ということになると、時給では良くても半日単位でみると収入減となり「産業医のバイトは、割りの悪いバイト」ということになってしまいます。

では、現在どういう医師が、嘱託産業医として働いているのでしょうか。

どんな医師が嘱託産業医になっているのか?

産業医大を卒業した医師

卒業すれば産業医資格を得ることができる産業医大。この産業医大を卒業した後は常勤産業医が必要な大企業に就職することがほとんどです。

なので産業医大を卒業した医師が、嘱託産業医として働いているケースはあまり見かけません。

病院を退職しクリニックを開業した医師

さて、医師が病院を退職しクリニックを開業した場合には、地元の医師会に所属することがほとんどです。

しばらくすると医師会から嘱託産業医を探している企業の情報がまわってきます。産業医の業務がどういうものか興味があり、希望するのであれば手を挙げて産業医を引き受けるということになります。

健康診断を引き受けたり、その後の治療も含めて患者増に繋がるという期待もあったりします。また月に1度の訪問ですし、近所の事業所であれば、昼休憩に職場巡視と安全衛生委員会への参加も可能で負担もそれほどないように思えるからです。

良いことずくめのように思いますが、自分のクリニックが繁盛してくると訪問時間の捻出が困難になることもあります。

忙しさを理由に相談に迅速に対応してもらえなかったり、ひどい場合には毎月の訪問さえ断るようになったりします。

地元企業のためにと頑張っている開業医も多いのですが、最近では医師会に依頼しても引き受ける産業医が見つからない地域もあるようです。

独立系産業医

そのような中で最近増えてきているのが「独立系産業医」。ディープ・フォレストもこの独立系産業医です。

元々は内科や精神科の勤務医であったものが、産業医業務に関わるうち徐々にのめり込んで産業医が本職になっていくパターンです。

「病気の治療だけではなく従業員の健康を守るような予防活動を行いたい」「メンタルヘルスで問題を抱えている社員が健康に働けるような職場作りをしたい」など、それぞれのきっかけは様々です。

今後はこのような産業医が主流になっていくのかもしれません。

投稿者プロフィール

林 恭弘
林 恭弘
1992年和歌山県立医科大学卒業。脳神経外科,一般外科を経て、訪問診療クリニックの院長に就任。 職員の採用や研修、休職・退職問題などに関わる中で労務管理の重要性を認識し産業医活動を開始した。 一般社団法人全国産業保険機構代表理事。 企業人事部向けに「メンタルヘルス対策」や「うつ」「発達障害」についての講演も行っている。 またテレビ朝日系医療ドラマ「DOCTORS」シリーズを始めとする各種テレビ番組の医療監修・指導、出版物や企業のパンフレットなどの監修も行っている。

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